【生徒が作成した学校CMの1シーン】
自分たちが毎日通っている学校を、第三者に宣伝するために新しい目で見つめなおすというのは、生徒にとって新鮮な活動だったようです。授業時間外でも、熱心に取り組むグループもありました。
対象学年:
活動カテゴリー:
時間:
高校生
情報、特別活動
WebCMについて学ぶ(1校時)、CMの企画と撮影(4校時)、鑑賞会(1校時)
ねらい
本実践は、イギリスの全寮制の学校で行われました。一般的な学校と比べて、ほぼすべての生活が学校敷地内で完結するという特殊な環境にある反面、生徒たちは自分の生活を客観的に観察する機会がなかなかありません。本実践を通して、学校生活を客観視することを促し、学校への愛着を育んだり、自信を伸ばしたりすることを狙いとしています。
学習指導要領に即した活動目的は以下の通りです。
・グループでCM撮影を企画することによって、他者と協働するためのコミュニケーション力を伸ばす。
・グループでCMの構成等を考案することで、主体性を発揮しながら、集団の中で合意形成を図る能力を身につける。
・既存のWebCMの背景を調査することで、情報を主体的に収集・判断する力を養う。
※本実践は、情報の授業の一環として行ったものですが、理念としては特別活動に通ずるものがあります。実際、授業ではなく学校行事の一環として行っている他校の事例もあります。
用意した教材・必要な教材
・ipad(本実践では、i-movieダウンロード済みの学校用ipadを、各グループに一台ずつ貸与)
・実際のWebCMの動画(本実践では、「カロリーメイトCM「見えないもの」篇」のYoutube動画を利用)
・ワークシート(CM分析、CM企画書)
実施順序
1 既存のCMをグループで分析する(1校時)
いきなり「WebCMを作りましょう!」といっても、生徒には難しいです。まずは既存のCMを見せて、それがどのように作られているのか、背景を分析させます(ワークシート参照)。
本実践では、「カロリーメイトCM「見えないもの」篇」のYoutube動画を利用しました。ストーリー性のあるCMなら、何でも使えると思いますので、生徒の興味に合わせて選定してください。
【カロリーメイトCM「見えないもの」篇】
※「CM分析ワークシート」別添
2 学校CMを企画する(1~2校時)
1校時で行ったCM分析の活動をふまえて、グループで学校CMの企画書を書きます(ワークシート参照)。学校CMは、「学校を商品として見立てて宣伝する」ことを目的として撮影します。
どんな相手に、どんな狙いを持って宣伝するのかを重視するように強調します。いわゆる「身内ノリ」の楽しい動画撮影で終わらせないためにも、これは重要な点です。
「宣伝する対象が入学を希望する子どもなのか親なのかで、何を強調するかが変わる」「学校の良いと良いところを全部は説明しきれない。何を選ぶか?」「どうやったら短い時間で効果的にメッセージが伝えられるか?」等、いろいろな点を話し合っている様子が見られました。
企画書が完成したら、教師がチェックし、OKが出たら撮影に進みます。
※「学校CM 企画書 ワークシート」別添
3 学校CMを撮影する(2~3校時)
撮影は、生徒の主体性に任せるしかありません。ここを円滑に進めるうえでも、2の企画書は重要です。
撮影時に、教師側から出来ることはあまりないのですが、安全上、各グループの撮影場所を把握し、適宜巡回してください。
本実践では、生徒たちは主に屋外(校内のスペース)を撮影場所に使っていましたが、雨天時のバックアップとして、空き教室等おさえておくと安心です。撮影で各グループが台詞を言うことを考えると、一つの教室内で複数グループが撮影を進めることは不可能なので、場所には余裕を持つことをお勧めします。
また、撮影時にはどうしても盛り上がって大きな声が響くことが想定されるため、予め「撮影活動をする」ということを他の教職員と共有しておくとよいです。
【生徒が作成した学校CMのシーン】
4 鑑賞会(1校時)
全グループの撮影が終了したら、鑑賞会を行います。「学校の宣伝」という共通したテーマでも、グループによって宣伝方法が全く異なるということがよくわかります。
教師がその場でスコアをつけて、最優秀賞を発表すると盛り上がります。情報の授業の一環として行う場合は、スコアの基準を最初に生徒に共有しておくとよいでしょう。(評定を気にする生徒は多いので。)
普段は「意見を言ってください」と言ってもなかなか声が上がらないのですが、この実践では自然と他グループのCMに対する感想が教室で共有されました。多かった意見としては、「同じ学校なのに注目する点が違う」「同じことでも、違った演出で宣伝されている」というものが挙げられます。「CMを通してみると、なんだか自分の学校がよりよく見える」という声もありました。
<執筆者から>
特別活動では、生徒が集団の中で主体性を発揮することが特に重視されています。本実践では、それを実現しつつ、さらに学校への愛着を高めることも狙いとしています。実際、本実践を通して、生徒は自分たちの学校の良さを再認識していました。
撮影自体は生徒に任せる部分が大きいため、高校生を対象としています。実際には高校二年生を対象として行いましたが、生徒の様子を見て実施学年は選んでください。
「CMを撮影しましょう」とだけ生徒に指示しても、有意義な授業にはならない可能性が高いです。撮影自体は生徒の主体性に任せますが、だからこそ教師が念入りな下準備を行う必要があります。「生徒の主体的な活動」にこそ、教師の「見えざるガイド」が不可欠だと思います。
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